闇堕ちした黒猫

暗かったり重かったり明るかったり

4月1日

新しそうなスーツを着ている人たちを見ると、

自分が新社会人だった時のことを思い出す。

 

自分が社会人になった日は、

今日と同じ、4月1日だった。

 

希望と夢で胸がいっぱい!

…なんてことは無く。

初日から後悔で始まっていた。

 

なんでこの仕事を選んだのだろうか、と。

 

 

 

 

 

周りを気にしすぎた

 

就活中は、やりたい事ばかりあった。

この世にあるものが全て輝いて見えていた。

 

とりあえず、魅力的な仕事が見つかれば求人票を印刷しまくった。

最初は、芸能関係か、お笑いライブに携わる仕事をしたいと思っていたので、マネージャーの求人や、ライブ関連の求人は特に大事に見ていた。

 

でも、同時に学校の先生たちの目を気にしていた。

そんなの気にせず好きなことをしてたら良かったのかもしれないけど。

先生たちに、芸能関係やライブ関連の求人を見せて相談したら、驚かれた。肯定する意見は無かった。

雰囲気的には、お前には向いてないって言われてるような感じだった。直接そうは言わないけど、いい反応ではなかった。

魅力的だと思える求人を探せなくなった。

 

私が1番やりたくなかったのは、パソコンに向かい続けて仕事をすること。事務職は避けたいと思っていた。

大きなビルの中にある会社で、カタカタとパソコンを打ってるようなイメージがあったのだが、それが自分に合う気がしなかった。

 

でも、私が「事務の仕事をしたい」と言ったら、先生たちが肯定してくれたので、私は自分の気持ちを隠し続けて、結局は事務職をすることになった。

 

周りの目を気にしすぎた。そして、自分の好きな事に、自信が持てなかった。貫き通す強さがなかった。

 

 

 

 

 

 

心身に馴染まない社会人生活

 

そして卒業後から4月1日の入社日になるまで、

私はひたすら鬱々としていた。

 

この時点で、事務職を選んだ事を後悔していた。

でも、始まってもないものを辞めるわけにもいかず、重たい気分のまま、入社式へ向かった。

 

初日は新入社員としての手続きで終わったので、

まだ業務らしい業務は始まっていなかった。

 

それなのに、すごく嫌な予感がした。

 

漂う雰囲気が、緊張感で満たされてる時に感じるそれじゃなくて、

重たくて、暗くて、心を喰われそうな、

危険な予感だった。

 

会社見学の時点では気づかなかった違和感。

どこの会社だってこんな感じだろう、と思っていた。新卒の状態である私には、比較対象もなかった。

 

違和感は会社に対するものだけではなかった。

自分がなぜ、こんな場所で働いてるのか、理解できなかった。

 

自分で会社を選んでおきながら、新生活の何もかもが合わなかった。毎日やってる事なのに、馴染むこともなかった。

・22時就寝、4時半起床

・毎日のメイク

・満員電車での通勤

・往復3時間強の通勤時間

・パソコンの音だけ鳴り響くオフィス

・残業

…。

 

全部がストレスだった。

でもこれを耐えなきゃ普通の社会人になれない、社会不適合者になってしまう、と思っていたので、耐え続けていた。

そして夏を迎えた頃に壊れてしまった。

 

 

 

 

 

職を転々として分かったこと

 

それから職を転々として、正社員ではなくアルバイトとして色々とやってみた。

 

そこで分かったことが いくつかある。

 

 

・決まった時間に働くのがしんどい

 

まず「週5ぐらいで同じ場所に行って、8時間かそれ以上に働く」ということが、私にとっては耐えられない環境っぽい。具体的に何故なのかはよく分からない。

 

でも何となく、人生を損してる感じがする。

 

同じような日を繰り返すというのが鬱々としてくる。さらに、長時間勤務だとミスを多発してしまう。世間的にたぶんあたり前であろうことが、私には出来ない。飽きっぽさがあるのかもしれない。変化や刺激がないと続けられない。

 

 

 

・毎日同じ人と顔を合わせる

 

これも強いストレスだった。

なんでか分からないけど、私はどんな相手とも、顔を合わせる日数が増えれば増えるほど、緊張して苦しくなってしまう。

 

初対面のときの方がリラックスして話せていたんじゃないのか、と思うくらい、ガチガチに緊張してしまう。

 

それがプライベートの中であれば、まず週5も顔を合わせる人がいないので平気なのだが、仕事になると毎日会うことになるので、苦しすぎてもう行きたくなくなってしまう。

 

 

 

・パソコン恐怖症

 

基本的な操作や入力は出来るので、問題ないように見られてしまうが、

どれだけ業務に集中しようとしても、パソコンのカタカタ音がうるさくて気が散る。

自分のだけでなく、周りのカタカタ音、そしてコピー機の動く音などが重なり合ってしまうと、もう最悪だ。気が狂いそうになって、鬱々としてくる。

 

私が描いていた社会人のイメージに、私は合わすことが出来そうにない。

 

 

 

好きな事を仕事にするのが一番?

 

今は、前職で心が病んでしまったので無職だが、

月1回だけ仕事をしている。

それは、私が就活時にも探していた、ライブ関連の仕事。

初めてのことだらけで大変さはあるが、これが想像以上に楽しい。

 

始める前まで、ずっと怖かった。

 

好きな事を仕事にしたら、好きな事が嫌いになってしまうのではないかと。

そうなったら、私の生きる気力も何もかも無くなってしまう気がした。

 

仕事を転々としている中で、いろんな現実を知る度に、世の中に対するワクワク感や、夢、希望、みたいなものが、自分の中からどんどん失われていった。

 

それと同じように、好きな事に携わるような仕事をしてしまったら、

失望して、嫌いになって、なにも好きになれなくなってしまいそうで、踏み出せずにいた。

 

でも、この一年で考えが変わっていった。

その好きな世界に一歩踏み出したくなった。

その世界が無ければ、自分はもう生きてなかったかもしれないから。

恩返しになるか分からないけど、少しでも役に立ちたい、力になりたいと思うようになった。

 

そして思い切って踏み出してみた。

ずっと好きだった世界に。

 

 

 

好きな事を嫌いになるどころか、もっと好きになった。

今までしてきた仕事の中で、これが1番楽しいと思っている。

 

 

最初から、周りのことなんて気にせずに、好きな事を仕事にしていたら良かったかもしれない。

好きな事って、こんなに頑張れるのか…と驚いてる。

 

ただ、これが、決まった時間に毎日…となると、違ってきてしまうかもしれない。

月1回程度でやっているからこそ、楽しめてるのかもしれないが…分からない。そもそもこの仕事は、毎日あるものとは限らないのだが。

好きな事は好きでいたいから、いい距離感を保っていたいとは思う。

 

 

 

 

 

新社会人のスーツ姿がまぶしい。

自分はどんどん、追い抜かされていくのかもしれない。

あのまま社会に適合できていたら、今頃はどうなっていたのだろうか…なんて、時々考えるけど、それぞれの人生だから、比べたって何もならないよね。

 

私はこれから、

好きなように生きていきたい。

 

 

 

どうか、

私のように耐えて壊れてしまう新社会人が、

増えませんように。